2008/07/14

課長には権限がないか?

 今日お客様とお話ししていて、先日の日経ビジネスの記事が話題になりました。「名ばかり管理職」について、課長クラスの7割強が「いる」と回答し、会長・社長になると8割強が「いない」と回答している、という調査結果です(日経ビジネス7月7日号」)。この「名ばかり」について言えば、定義がやや不明確な気もしますが、問題認識としてはようやく話題になったか、という感じです。バブル崩壊以降、というより90年代の後半からリストラを進めて以降、少ない人数で最大の成果をというのが、どちらの組織でも共通のテーマだと思います。ですから、課長といえどもプレーヤーであることから逃れるのは難しくなっているのでしょう。どなたもそのようにおっしゃいますから。
 さて、私は、「名ばかり課長」とは、実は「周りの人が動いてくれない課長」のことだったら面白い、と思いました。「課長になったのに部下が動かない」が問題の本質だったら、これはアラン・コーエンが80年代にInfluence without Authorityを書いたときの状況、そのものです。「私たちは職位があがると、権限も強まり、人を動かせる」と思いこんでいますね。これはわれわれ組織人共通の思いこみです。その結果、「部長になったらもっとみんなが動いてくれるんじゃないか」などと考えるのです。社長になったら、社員を思い通りに動かせる、などと考えますよね。ところが、アランとデビッドが見たところ、少なくともアメリカでは80年代にそのような権限で人は動いていなかった(その理由は「影響力の法則」に書かれており、今日は割愛します)。それから20年近くたって、いよいよその現実が常識になってきたのだそうです。つまり、「名ばかり課長」には権限がない、のかもしれないけれども、権限があっても人を動かせないのかもしれない。「権限」が空洞化(というか意味をなさない)しているような状況。したがって、ひょっとしたら部長になっても、社長になっても部下は動かないのかも知れない。仮に、総理大臣になっても部下は思うように動いてくれない。
 「名ばかり課長」の本質が、ここにあったら面白いでしょう?私はこれはあたっていると思います。組織のトップの方は気づいています。「トップになったのに、誰も思い通りにならない」でも課長は気づいていないから、一層苦しい。「もっと上に行けば動かせるのに」無い物ねだりは、苦しいですよ。

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