2008/06/28

学生の発見

 今週の授業で学生が述べたこと。私は若者の発見として、ちょっと身震いするような感動を覚えました。
 彼女が言っていたのはこのようなことです。インターンシップで職場体験をしてきた。インターンにいく前には、働くとことを自分中心に考えていた。だから、どんな仕事につけるか、どんな会社に入るか、そんなことばかり考えていた。よい仲間に巡り会えるか、多くのことを教えてもらえるか。そう考えると、社会に出ること、就職することは恐くてならなかった。もし希望がかなわなかったらどうしようか・・・
 インターンを体験してひとつひとつの仕事を工夫していくと、色々な変化が起こることに気づいた。たとえば、会社説明会の手伝いをしたとき、最初は興味がなさそうな学生が、説明を聞くと顔の表情が俄然変わる。この変化に興奮した。とても人と接する仕事ができると思えなかったが、今では営業の仕事もできると思う。仕事に対する考えも変わった。仕事はひとりではできないものだ。いろいろな人と関わりながら仕事をしている。そうして変化を起こしているのだ。だから、どんな会社にはいるかも、仕事につけるかも、それほど意味はない。どのように関わっていくかが問われているのだ。それを楽しめればいい。そう考えると、社会に出ることが楽しみになった。
 こういう学生を採用してください!

2008/06/27

チームで仕事をする

 今日は、かつて同僚だったアメリカ人女性と私と妻で夕食をともにしてきました。とある大手企業の教育責任者である彼女の抱える問題は、日本法人のメンバーのコミュニケーション能力欠如にあるようです。国外のメンバーと部門横断的に仕事を進めるときに、日本のメンバーが効率的に参加できないことが多い。それはコミュニケーション能力の問題だ、というわけです。
 これを「影響力の法則」で考えるとどうなるでしょうか。遠く離れた国外に拠点を置くチームメンバーとの間でも、レシプロシティは働きます。無視することはできません。よってこちらからなんらかのカレンシーを渡さない限り、相手からは何も返ってこないと考えていい。もしこちらから何ものも渡さなければ、知らず知らずのうちにこちらは蚊帳の外になってしまうでしょう。電話会議など非言語のメッセージを伝えにくい情報伝達チャネルしかもたない場合、だまっていればそうなりがちです。
 ところが現実には、黙っていてもあうんの呼吸で相手が何とかしてくれる、と思っているところがあるのではないかな。もしそうだとしたら、実はどんなにすぐれたコミュニケーション技術の持ち主であっても、うまくいかない可能性があります。それどころか、仇になることもありそう。たとえば「相手を理解するために、もっと傾聴しなければ」などと考えたために、一層受け身になり、相手に渡せるカレンシーの幅を狭めることがあるのではないでしょうか。(注 傾聴そのものがカレンシーになることもありますから、傾聴のパワーを否定することはできませんよ)
 チームがいい成果をあげる過程では、カレンシーの交換が頻繁に行われているはず。それを忘れないようにしなければな、とあらためて思いました。

2008/06/26

ケースメソッド教授法

 今日、日本ケースセンター主催の、ケースメソッドセミナーに参加しました。
 ケースメソッドは、ケース(事例)を検討、集団で討議することを通じて、同様の場面に遭遇したときの判断能力を高めることをねらった訓練方法です。今回はハーバード大学ビジネススクール(HBS)、C. ローランド クリステンセン教育センターのウィリス・エモンズ教授によるリードで行われました。 
 討議によるアウトプットの質は、参加者同志がどれだけ影響を与えあえたかにかかっています。なぜなら、影響を与えあいながらひとりでは考えつかない新しい知見やアイデア、理解にいたるからです。オープンに影響をおよぼしあえる関係は、「学びの共同体」と呼ばれます。いかに早くこの関係を築けるかは、ケースリーダーの腕の見せ所でしょう。今日の参加者80名はモチベーションも高く、生産的なグループに近づいていると感じました。そうなると、お互いに理解が深くなるのですね。ここでも、各メンバーの観点が持ち込まれ、交換されているのです。おもしろかった。

2008/06/25

Exchange Server


 マイクロソフトのExchange Serverの広告を連日目にします。いわく「社員力を、経営力に。」これは、影響力の法則のことをいっているのか!?そんなことはありえませんが、本質は共通しています。
 サーバーを通じて、人々が情報を交換(exchange)する。これを繰り返すと組織力になる。この交換が繰り返されるかどうかは、メンバーのレシプロシティと影響力の法則にかかっています。レシプロシティが働かないと、交換は尻すぼみに。逆に影響力の法則に則れば、有益な情報と専門能力、加えて人間的なやりとりが交換されるようになるでしょう。
 Exchange Serverを導入している企業には、ぜひ「影響力の法則」も導入していただきたい(^^)

2008/06/24

レシプロシティに逆らうと・・・

 今日、お中元が届きました。20年ほど前初めて浜松に赴任したとき、近所でお世話になった方からです。ありがたいですね。三方原の馬鈴薯です。美味しいんですよ。さて、こうして頂き物をすると、さっそくお返しを用意します。今年は何にしようかな。このようにお返しを用意しようとするのはごく自然なことです。レシプロシティが働いているからです。
 レシプロシティとは、何かをしたらお返しをもらえる、あるいは何かをもらったらお返ししなければならない、という社会通念です。この社会通念は、時代や文化を問わず、人間社会に普遍的なものと考えられています。スウェーデンや中国の原住民にも、ニューヨークのビジネス人たちにもみられるそうです。お中元に限らず、日本の社会のいたるところでレシプロシティは働いています。もちろん、日本のビジネスの世界でも。「営業担当者からお客さんの情報を知らされ、製品開発に役立てられた。お返しに新製品の情報をいち早く伝えたところ、営業担当は早期に見込み客を獲得できた」などということは、日常的に起こっていることです。ありがたいな、と感じることをされると、相手にとって役立つことをしたくなる。これはレシプロシティがあるから。このようにそれぞれがもっているものを交換しながら、人々は社会を築いてきたとも言えるわけです。
 さて、このレシプロシティを無視したり逆らったとしたらどうなるか。「あいつは何かしてやっても、何も返さない」と感じると私たちどうするでしょう。多くのかたが、そのような人を相手にしなくなってしまうのではないでしょうか?だとしたら、それは相手の行為が、レシプロシティに反するからです。レシプロシティに逆らえば、集団の中で孤立していく。すると会社の中でも、なかなかいい仕事ができなくなりますし、会社を辞めなければならなくなる場合もあります。みなさんの周りで、そのようにして孤立している人に会ったことありませんか?その方、苦しそうではありませんか?
 レシプロシティに気づかないと、このような落とし穴に落ちやすいですね。逆にレシプロシティを意識すると、人間関係がより豊かにできるのではないかな。だからこそ、親や教師、上司は、それぞれの社会の中でのレシプロシティを教えているのですね。

2008/06/23

一目置かれるプロマネ

 この8月1日「ステークホルダーマネジメント 「影響力の法則」セミナー」が開催される予定です。プロジェクトマネジャーとしてご活躍のみなさんを対象に、プロジェクトの利害関係者(ステークホルダー)を協力者にしよう、というセミナーです。
 共催会社である株式会社プロジェクトマネジメントオフィスの好川哲人さんとの間に、プロジェクトマネジャーには日が当たらない、いいところはプロジェクトのオーナー(スポンサー)が持って行ってしまう。プロジェクトマネジャーのみなさんが周囲からもっと認められるようになったらいい、といったやりとりがありました。おそらく、プロジェクトマネジャーが認められるようなプロジェクトは、うまくいっているのではないでしょうか?メンバーの専門能力がうまく引き出され、他の関係者の必要をみたしている。逆にプロジェクトマネジャーが認められていないようなプロジェクトが、うまくいっているようには思えません。
 これをカレンシーの交換で考えるとどうでしょうか?それぞれのステークホルダーによい結果がもたらされれば、プロジェクトマネジャーは、組織内で高く評価される、というやりとりになります。そう考えると、少なくともステークホルダーにとって真に「よい結果」とは何かが定義されていることが、プロジェクトマネジャーが認められるうえで必要条件になっていることが分かります。
 ところが、これが容易ではない。先日もあるプロジェクトのリーダーが、「お客が悪い。お客たるものもっとかくがくしかじかすべきだ」と言っていました。私は彼が言うこと、よく分かるし正しいと思います。しかし、彼のお客にとって「よい結果」が何であるのか、彼が理解していないことにも、いささか胸を痛めました。みなさん、どう思われますか?

2008/06/22

チャレンジする部下

 NHK土曜ドラマ「監査法人」。影響力の法則を学ぶための、よい題材だと思います。
 今週目を惹いたのは、若手会計士の主人公(塚本高史)と理事長(法人のトップ 橋爪功)が、バーのカウンターで話しをしているシーン。主人公の口調はとても大組織のトップに対する若手の話し方とは思えません。若い主人公は正論をどんどん述べます。当然、理事長はいい顔をしない。
 ところが、この若者が「監査法人」では重用されるのです。生意気な口をきく若者。クライエントに何を言ってしまうか分からない。ですから、普通なら責任ある仕事を与えられるはずがありません。ところが、ドラマの中では大きな仕事をどんどん担当する。これを見て奇異に感じる方、少なくないと思うのです。ひとつ考えられるのは、この上司の弱みを若者が握っているということ。握った弱みを口外しない、というのは大きなカレンシーです。ドラマ的にもあり得ると思います。
 私には、それ以上にかつて自分が若かった頃を彷彿とさせる、若者の熱血漢ぶりは、実は大きなカレンシーになっているのではないか、と思います。ポジションがあがれば、自分に思うことをぶつけるものはいなくなる。トップならなおさらです。誰も本音で交流してこないとしたら、孤独でしょうね。ところが、このポジションの違いを怖れずに挑戦してくる部下は、まぶしく頼もしくうつるだけでなく、心の友のようなところがある。多くのリーダーにとって、そんな部下はかわいいのです。
 みなさんの上司は、どうでしょうか?