2010/02/07

朝青龍の引退

 朝青龍の引退は残念ですが、技を持ったプロがその力を土俵の外で使ってしまったのですから、これはやむを得ないでしょう。皆が言う「勝つだけではだめだ」というのもよくわかります。横綱は受けて立たなければならない。横綱相撲ですね。だれもそれを彼に教えられなかったのかと考えるとは、本当に惜しい。たぶん、最後まで横綱相撲の意味がわからなかったのでしょう。

 仕事についての前提、キャリアの成功についての前提は、人によってずいぶん異なります。
 結果を出せばいい、と考えている人もいれば、仕事を通じて人間的に成長することが目的だと考える人もいる。マックス・ウェーバーによれば、プロテスタントの地域が資本主義の経済活動でリードしたのは、お金を稼いで豊かに暮らせるのは、神に認められている証、との認識されていたからです。まあ、今となってはいささか単純な気もしますが、アメリカにおける成功話は、そうして蓄えた財産を人々に施す話しが多いですよね。カーネギーしかり、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットしかり。ビジネスでいい結果を出せば認められるのは現実だし、結果そのものが目的となるのは当然と思われますが、すべての人がそう考えるわけでないのは興味深いところです。

 対して日本では、仕事を通じて人間性を磨く、という話しになる。日本航空の会長になった稲盛和夫氏が最近では代表格です。ホンダの元社長、久米是志氏はものつくりに仏道を見いだしています。思いを尽くせば「無分別」の状態となり、初めて良いものができる。自分と対象物が一体になるまで魂を注ぎ込むと、いいものができ、結果儲かるときもあると。自分を捨てよ、といっているわけです。うーむ。そのようなイデオロギーは江戸時代からあった。たとえば、三河の城持ちだった鈴木正三のように、ビジネスが仏性と結びつく話しは少なくないですね。

 このようなアプローチが日本独特のものかどうか定かではありませんが、「相撲道」があれば、やはり相撲における成長が人格の成熟に結びつくのは必然と感じます。しかし、これを理解するのは必ずしも容易ではない。朝青龍の事件にも、難しさを感じました。若者の意識も確実に変わっています。それがいいのかどうかは・・・・。私は「仕事を通じた人間の成熟」の方に魅力を感じています。

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