2011/02/23

負けて勝つ

 大阪出張の帰りに、京都に立ち寄り、東寺の山田忍良師にお目にかかりました。山田師は毎週金曜朝6時45分から東寺回向堂で「金曜法話」を続けられています。いただいたレジュメによると、先週18日の法話のテーマは「負けて勝つ」でした。若き日の師が、先輩の教師から「相手を打ち負かすより、負けて至らなかった点を自覚できれば、はるかに大きな収穫を得られる。逆に勝ち進んでもやがてはその害がおよぶのではないか」と言われ生き方を変えた、と書かれています。「負けて勝つ」という感覚、あるいは真理と言ってもいいと思いますが、私たち多かれ少なかれ体験していることではないでしょうか。リスクを冒してみたものの、やはり負ける。でも負けたことから多くを学べます。影響力の法則で考えれば、この学びをカレンシーがえられたと考えてみることができるわけです。
 さらに人間関係で考えると、相手に「言い負かせた」「譲ってもらった」という感覚が残るかもしれません。負けることで相手にカレンシーを渡していることもあるわけです。言い負かした相手が、次回味方になってくれかもしれません。

 折しも大阪では名門企業で、素晴らしい人材(主として技術者)を前にお話しさせていただきました。みなさん素直で純粋、まじめな方たちでした。さすが、日本の優秀な人材を組織化した企業である、と心から感心しました。その会社が長きにわたって発展してこられたのは、この人材によるところが大きい、と実感します。
 ところが一般的には、優秀な人材ゆえに、影響力が発揮されなくなることがあります。それは優秀な人が「負けるが勝ち」を苦手とするところがあるからです。総じて優秀な方は、学校、会社でずっと勝ち組にいたワケですから、知らず知らずのうちに、相手の上手に立とうとしてしまう。理論で論破したり、知識で圧倒するのが成功パターンになっています。彼らの言うことは確かに正しいのですが、相手には嫌な気持ちが残ってしまうこともしばしば。そうして勝ち進んで管理職になっても、部下や他部門からは、マイナスのカレンシーを受け取ってきた、という想いがあるので、協力したくない。結果的に、まわりが動かず目標達成に黄信号がともってしまう。そういう上司、少なくないでしょう?一方で影響力のある管理職は、控えめですらあることが多いですよ。
 
 今勝つのが本当の目標か、10年20年後に大きな仕事を成し遂げるのが本当の目標か、この判断は難しいですが、よく考えてみるべきでしょう。
 「負けて勝つ」には真実があると思います。

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