2011/07/06

復興担当大臣が渡した負のカレンシー

 今日は、松本龍復興担当大臣の辞任が話題になりました。ご本人のことはよく存じませんが、親の遺産(地盤)とはいえ20年も国政に携わってきたベテラン、昨年の名古屋議定書を交渉の末にまとめた功労者、それなりに社会的な責任がおありな方が、またしてもこんなことをしてしまいました。残念としかいいようがありません。

 私はこの人が「影響力の法則は、カレンシーの交換にある」ことを知っていたらなあ、こんな馬鹿なことにはならないのになあ、と思います。すなわち、相手を動かし味方につけたければ、相手が価値ある何かを差し出さなければならない。逆に相手がいやがることをやれば、自分の進路は妨げられる、ということです。影響力の法則に則らなくても果たせる役割はあります。自分ひとりになっても完遂できるような業務、つまり比較的単純な仕事です。しかし、今回の復興支援のようなすべての国民が当事者としてかかわらなければ果たせないようなプロジェクトであれば、そうはいきません。たとえば、消費税率を大幅に引き上げるのを、国民の理解なしに進められるはずがありません。多くの人たちに犠牲、協力を頼もうと思ったら、それはひたすら正のカレンシーを渡すしかありません。

 カレンシーといっても、お金や道路の建築ではないはず。負担が増えるが、子孫代々繁栄する世の中や、子供たちがワクワクするような夢を描くなど。また国民一人ひとりが復興に協力している、という責任感を感じることもカレンシーになります。誰でも自分が人や社会の役に立ちたいのですから。

 しかし実際の交換は、「見下した態度」と「辞任圧力」でしたね。本当にがっかりです。彼らはリーダーシップが人の上手に立つことだと誤解しているんじゃないでしょうか。彼らとは、一部の国政にかかわる人たちのことです。あんな口ぶり、サングラス、すべてがとんでもない誤解です。ヒトラーがリーダーだったと思っているんでしょうか?鳩山政権以来そのために国民の支持を失っていることに気付かなければ、いつまでたってもやってしまうでしょう。そりゃ、官僚は簡単には動きません。長年、自民党にコミットしてきた人たちなんですから。官僚の立場に立ってみれば、長年カレンシーの交換をしてきた信頼できる政治家と、突然やってきたこちらの言うことが分かるのかどうか不安な政治家では、対応が違ってしまうのは当然でしょう。外資に買収された日本の伝統企業で従業員が幹部の言うことを行かないのと一緒です。だからといって、切れてしまっては、負のカレンシーの交換になって、政治家はリーダーシップを失うだけですよ!

 こう書きながら、我が身を振り返って反省することばかりです。ひとつひとつできることをやるしかないな、と自分にも言い聞かせています。

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