2011/05/02

「戦火のナージャ」

 ニキータ・ミハルコフ監督の『戦火のナージャ」(太陽に灼かれて2 The Exodus)を観ました。ミハルコフは私の最大のお気に入りです。現役の映画作家、芸術家としては、私の中では頂点です。個人的には、ヴァン・ゴッホに匹敵する人間描写と考えています。

 この作品、どんどん引き込まれてしまい、2時間半はあっという間でした。まずいつものように、美しい大地と地平線。その間に人が生きているんだ、人は自然の一部と思わされます。親子の愛と絆もいつものテーマです。ロシアは家父長の強い世界と思われていますが、強い父のモチーフは今回も感じました。
 またミハルコフ作品は、いつも少し可笑しい日常が描かれ、その直後に登場人物たちを地獄に突き落とします。今回は、士官候補生が合流し、罪人たちと要塞を築く、そこで交わされるエリートと非エリートのちぐはぐなやりとりで笑いを誘った後に、ナチスの戦車がやってくる。ロシア(ソビエト)側は、数人を残して15分の間に240名が殺されてしまう。赤十字の船がナチスのパイロットの怒りを買い、執拗な攻撃を受ける場面もありました。とにかく燃料が切れるまで報復するのです。やられたらやりかえす、という単純な心理(それも怒りよりも怖れ)が恐怖のどん底に突き落とす。日常と地獄が背中合わせと感じさせるのは、さすがです。

 試練を神の計らいと考えなければ、それに耐えるのは難しいのではないか。最大の感想です。

 公開中にもう一度観に行くと思います。

2011/05/01

試練に立ち向かった2人

 NHK ETV特集で、浅野史郎氏と村木厚子氏の対談「二人の”チャレンジド”」を放送していました。このおふたり、ちょうど時を同じくしてガン(白血病)とえん罪の試練にさらされることになります。お話を聞き、ふたりがそれぞれの試練に向き合う姿勢、挑戦には、大変感銘を受けました。
 とりわけ感心したのは、村木さんが大阪拘置所に勾留されている間のこと。彼女は無罪の身で拘置されていることにショックをうけながら、拘置所のさまざまな現状を観察し続けていました。そして、自ら取り組んできた仕事(障害者の雇用)と結びつけて、入所者としての体験を記憶し、入所施設についての考察を重ねていくのです。たとえば、拘置所の職員の態度に力づけられ、障害者施設の職員の取り組みについて考えます。差し入れられた小説に「さまざまな試練があっても、それをどう受け止めるかは、本人が選択できる」という主人公の言葉を見つけ、自らを励ましてきたのだそうです。また浅野さんらの励まし(「あきらめるな、正義は必ず勝つ」)も救いになったと述べていました。(拘置所の職員に「泣いてちゃだめよ、あなた検察と闘うんでしょ」と言われたというのには、驚き感心しました)
 思い出したのは、精神科医フランクルが、ナチの収容所で収容者の体験を記録していったことです。その人にしか与えられない試練にどう取り組むかで、キャリアの価値が問われるのですね。

 職場やプロジェクトの現場ではどうでしょうか。試練に直面し、部下や同僚が混乱してしまっていたら。上司として同僚としてどう関われるか。やはり、目標は本人が困難を受け止め、適切に対処することでしょう。たとえば、問題を拡大させないことです。カウンセリングでも、落ち込んでいる自分自身に動転しないように働きかけます。
 では、もっとも価値あるカレンシーは何か。それはその人によって異なりますが、誰にでも共通するのは、「信頼」ではないでしょうか?あなたは回復する、あなたの目標を達成すると信じている、ということ。そしてその言葉を信じるに値する態度。私自身、そうありたいと思いました。