2011/06/04

不信任

 内閣不信任決議案が衆議院に提出され、否決されました。それと引き替えに、首相は退陣表明した。リーダーというのは信任されて部下がついてくるわけですから、菅内閣は死に体内閣になってしまいました。すでに韓国は李大統領訪日の見合わせをしているそうです。こんなときに、こんなことをやっていれば、一層の政治不信が、国民、世界に広がってしまうことは間違いない、ですよねえ。本当に情けない。死に体内閣になった以上、首相は早期に退陣した方がいい。

 一方不信任案を出す方も、相当な覚悟があったはずです。谷垣氏にとっては、加藤(紘一氏)の乱に次いで、また失敗だったように見えます。でも、私は最低限の目的を果たしたと思っているのではないか、と穿った見方をしています。それは原発反対派の押さえ込み、です。今回の決議案の主役たち(提出、支持者)に共通するのは、原子力発電じゃあないですか??まあ、笑い話と思ってください。そういう仮説に立った場合、です。

 彼ら(推進派)の立場に立って考えてみましょう。私が原発推進派であれば、この時期世論が反原発に流れるのを静かに止めたいと思います。原子力発電の危機なんですから。国民の多くは、原発を全廃するか、今止めるか、順番に止めるか、将来止めるか、に傾いています。ドイツやスイスは撤廃に向けて動き始めました。ここで原発推進の旗を振るのは、そうとうな勇気がいります。政治家なら落選につながりかねません。ですからそれと気付かれないように、世論を誘導したい。マスコミなどには強い影響を及ぼそう。反対派の人たちには、(前福島県知事のように?)そっと退場してもらいましょう。きたない、ひどい、というかもしれないですが、それは推進派から見れば当然です。そこに拠って立つのだから、必死です。
 菅首相は表だって原発反対ではありません。おそらくエネルギー政策について、それほど重きを置いてこなかった(と思います。ここが「公共の福祉より人権重視」の人の弱いところ)。よってエネルギー政策ではすぐぶれる。菅氏の支持者たちは市民活動家が多く、彼に圧力をかけているのは反対派です。彼自身はニュートラルでも支持者の圧力は無視できない。だから、私が推進派だったら、菅氏は何を言い出すかわからない怖い人です。すでに首相の一声で浜岡原発を止めてしまったうえに、この間まで海外で原発のセールスをしていたと思ったら、政策の見直しを発表しちゃうんですから。早めに退場してもらわないと、どんな不利益が起こるかわからないです。原発の是非を争点に解散されたりしては参っちゃいますよ。
 そこで、首相のリーダーシップがないとか、なんだかんだといって、世論を煙に巻く一方、政府に協力しないことで内閣を無力化してしまい、首相から退陣の約束を取り付ければ、民主党も含めた原発推進派はほっとします。

 なんて考えていた次第。こうでも考えないと、この時期、国民の批判を覚悟でこんな愚かな不信任の話なんか持ち出さない。合理的な理由がなければ、こんなことできないよなー。よって、谷垣氏にとって加藤の乱は失敗でしたが、今度は成功だったんじゃないでしょうか。

 こういうときに改めて思うのは、菅氏はもうちょっと長い時間をかけてカレンシーの交換を進め、政治家だけでなく官僚や財界にも根を張っておくべきでしたね。こういうときに味方が少ないと、結局組織を動かせません。若い代議士や官僚を怒鳴りつけてきたツケが、今になって回ってきてるんじゃないですか。業ですねえ。
 かつて竹下さん、中曽根さんが絶賛した政治家が、総理大臣になったら何もできないとは、国民としては情けない。そういえば、安部さん、福田さん、麻生さんも似たような印象だったなあ。これはやはり総理だけの問題じゃなく、フォロワーである国会議員こそだめなんじゃないか。リーダーが信任によってなりたつということは、フォロワーが腹を括ってリーダーを信任しなければ、どんなリーダーでも機能しないですよ。どっちもどっちですな。